きれい

いつもの園からの帰り道

エントランス前の歩道にさしかかる。

背中から「お花さん、きれいだね」と

娘の声がきこえてきた。

そういえばさっき

プランターにビオラが咲いていたな。

そのことと思った私は

「そうだね」と、ただひとこと

普通の返事をして歩きつづける。

しかし、足音はとまったままだ。

おもむろに振り返ってみる。

娘はじっとしゃがんで

プランターの脇に生えている

小さな小さなナズナを見つめていた。


プランターのビオラもきれい。

だけど、石畳の隙間に咲いている野の花を

きれいと思える君のこころが

もっともっときれいだよ。